昨日まで暮らしの足跡も、明日から歓びも。 リノベーションで叶えた、新旧・和洋が調和する豊潤な暮らし。
住み継いできた家には思い出がある。愛おしい記憶が刻まれている。床の傷も、壁の汚れも、それは単に朽ちたこととは違うだろう。その傷を指でなぞると、ジーンと懐かしさが込み上げてくる。長年、その地で商いをされてきたSさま。家族と紡いだ歴史も、お客様と交わした何気ないおしゃべりも、その全てが宝物だ。リノベーションによってこれまでの暮らしの足跡はそのままに、新たな息吹が吹き込まれたSさま邸の豊潤な暮らしをのぞいてみよう。
古さを活かして現代風をプラス
北洲さんならきっと素敵に仕上げてくれそう!
リノベーションのきっかけは、幼馴染みの家に遊びにいったことだった。「中古住宅購入+リノベーション」により、理想の暮らしを叶えた友人の家に一瞬で魅了された。「この感じ、私が好きなテイストだわ…」。「北洲さんで工事をした」ことを聞き、住まいの近くにある展示場へ早速出かけた。
「古さを活かしつつ、キッチンまわりを現代風にしたい」、それがSさまの希望だった。「北洲さんならきっと素敵に仕上げてくれそうだ」-、趣ある展示場の雰囲気を見て、そう思ったという。
暖炉風ストーブ、南部鉄器…
愛着ある暮らしの道具と丁寧に暮らす
思い出は出来る限り残したい、そんな想いから、かつて事務所+倉庫として利用していた空間と母屋へと繋がる土間スペースに手を加えた。天然木のような質感を楽しめるナチュラルオークのペルゴフロア、天井を彩る3本の表し梁、カフェのようなカウンター付きの対面キッチン…。事務所+倉庫スペースは新しいのに懐かしい、ほっと心が安らぐくつろぎの空間へと生まれ変わった。
アンティークな表情をした暖炉風ストーブ。炎がゆらゆらと静かに揺れる。天井に取り付けられたシーリングファン。室内のアクセントとしてお洒落な雰囲気を楽しめるのと共に、空気の循環を助け、ほんわかと家族を包み込んでくれる。
キッチン背面の飾り棚に並んでいるのは、南部鉄器の鉄瓶やコーヒーミル。「あそこでお茶を飲んだりしたいですねぇ…」、はにかみながらそう話すSさま。料理が好きだというSさまにとってキッチンは“プチMy Room”。奥行をたっぷり取り、カフェテーブルや椅子が置ける広さを確保した。パソコンでレシピを検索したり、本の続きを読んだり、こもれるスペースってなんだか嬉しい。
暖炉風ストーブも、キッチンツールも、新しく揃えたものではないという。長く使ってきた肌に馴染むモノたちばかりだ。思い出と共に丁寧に暮らす-、そんな暮らし方を垣間見せてくれる。コトコトコト…、今夜はどんな料理が並ぶのだろう。
丁寧な手仕事で懐かしい面影を残しつつ、
土間の段差を解消し、フラットに母屋をつなぐ
かつて事務所+倉庫と母屋は段差のある土間でつながっていた。履物を履いて下りる。脱いでまた上がる。行き来も大変だ。年を重ねてもラクに暮らせるように、一部愛犬と遊ぶスペースとして土間を残しつつ、段差部分には新しく床を作り、多目的スペースを新設した。旅館のような雰囲気の懐かしい面影を残しながら。
凛とした表情の高く、そして長く伸びる吹抜けの廊下。歴史の重みがひしひしと伝わってくる。新しく設置された床とカウンター、クロス以外は、全て既存のものが活かされている。木の天井が、壁が、時の流れと共に飴色に染まり美しい。天井や壁の持つ本来の静粛なる姿はそのままに、新しさとも違和感なく調和するように、ベテランの職人が丁寧に塗料を重ね塗りし、化粧を施した。
階段下には“ワンちゃんスペース”を新たに作った。一部を残した土間では、愛犬と一緒にたっぷり遊べる。照明は全て一つひとつ、Sさまが自分で探して見つけた思い入れのあるものばかり。和モダンな2台の壁掛け照明が柔らかな灯りでカウンターを灯す。「母が書道を習っているんです。お友達と3人で並んでもいいかなぁ…」。お母様は持ち回りで友人宅とを行き来しているという。「次回は我が家へ」-、順番が回ってくる日が待ち遠しくなりそうだ。
Sさまと一緒に、スタッフみんなで
楽しみながら、こだわりながら
Sさまはインテリアが好きだった。「こうしたい」というイメージも明確に持っていた。「それを汲み取って具体的な形にしてくれた、北洲さんの対応力には驚きました」と目を丸くする。「営業の方も、インテリアコーディネーターの方も、現場監督の方も、みなさんに本当によくしていただきました」。初めてのリノベーションは当然不安があるだろう。「こまめに連絡をしてくださったり、会社の方みなさんで応援してくれたことに感謝している」という。「この壁紙がいいな。けれど組合せたらどうなるんだろう…?」、サンプルで見た時と実際、壁に貼ってみた時に、イメージしていたものと違ったというケースは少なくない。そうした期待はずれの結果にならないように、担当者だけでなく、一度会社に持ち帰って、その他のスタッフの意見も聞きながら、スタッフみんなで工事を後押ししていった。
楽しみながら、こだわりながら作っていった、ほっとくつろげるリビング・ダイニング~キッチン、昭和レトロな面影を残す廊下スペース。2つの空間の間に設置されているガラス窓。それは既存の建物で使われていた言わばこの家の暮らしの生き証人。今日も見ている。これから先も見守っていてくれる。こちら側から見る鍋の湯気、向こう側から見た飴色の輝き…。額縁のように、暮らしの中の小さなつぶやきを切り取っていってくれるのだろう。