人生は長い。けれど限りはある。それだけに尊く、だからこそグンと視界を広げ「今を愉しむ」。家庭をつくり、子どもを育て上げ、次への扉を開ける大人世代こそ、そんな奔放さが大切なのかもしれません。リフォームで叶えた暖かい家。暮らし方も、考え方も、無駄なものを削ぎ落とし、シンプルに生きる。好きな物だけを傍に置き、ふたりの時間を愉しんでいらっしゃる、そんなご夫妻の暮らしをご紹介します。
決め手は「暖かさ」「視覚的なぬくもり」
思い出も生きる新しい我が家
お子様達も巣立ち、ご夫妻ふたりになったのを機に、これからの暮らしを見つめ直されたS様。時を重ねた住まいはすき間風が気になり、寒さが悩みの種だったと言います。「窓やドアに手を当てると『ヒュー』と音がして…(苦笑)」。「暖かくて過ごしやすい家でシンプルに暮らす」、これがおふたりのテーマでした。建替えも視野に入れながら、理想のライフスタイルに思いを馳せ約3年。「北洲さんを気に入ったのは、『見た目の雰囲気』と『暖かさ』、そしてどの住宅展示場へ行っても対応が良かったこと。洋服を買いに行った時、しつこくされると“うっとうしいな”って思いませんか?北洲さんは丁寧なんだけど、そういうのとは違ったのが良かったですよねぇ」。
S様邸は築28年。「2階の子ども部屋はもう要らないんじゃないかと思っていたのですが、『お子様達にとって帰る部屋があるのっていいと思いますよ』と言われ、『なるほど…』って思いました」。震災後に水廻りをリフォームされ、まだまだ一軍選手として活躍できる浴室や洗面化粧台。「普通なら嫌がられそうだけど『そのまま使いましょう』と言っていただいて。北洲さんだからできたことだったと思います」。「これは母が使っていた桐の箪笥なんです…」。キッチンと洗面室に設けられた収納の扉は、お母様の思いが息づく桐の箪笥を再利用したもの。既存の活かせるものは活かし、リメイク&リユースしながら、「断熱性能の向上」と1階で生活が完結できる「間取り変更」で、理想とされる「暖かくて過ごしやすい家でシンプルに暮らす」ことを目指しました。
断熱リフォームで、
足元からふんわり暖かい、
健康な暮らしが叶う家
断熱性能は住まいの快適性を左右し、健康的に暮らすことにもつながる大切な要素です。既存の家でもリフォームによって断熱を実現することは可能です。S様邸では「天井」「壁」「床」「窓(開口部)」と家全体をすっぽり断熱。「断熱リフォーム」では住まいの快適さを一般的な新築住宅より高い基準の断熱レベルまで引き上げることができます。
「寒い冬も薄着で過ごせるんだよねぇ…。以前は部屋の中でダウンベストを着ていたからね(苦笑)」とご主人。寝具も羽毛布団1枚。毛布がいらなくなったといいます。「それでも暖かくて足を出しちゃうこともあるくらい…(笑)」、コロコロと笑うおふたりの横顔は快適な暮らしを彷彿とさせます。
S様邸の間取りは中央玄関から左右にリビング、寝室が振り分けられ、階段を中心にぐるりと回れる回遊式。リビングの入口に扉を付けないことを提案された時、「えっ!いいの???」と半信半疑だったというご主人も実際に暮らしてみて断熱性能の実力に納得。「床暖房のおかげで暖かい空気が寝室や2階にも行き渡り、家全体が暖かい。扉をつけなくて正解だったね」。リビング・ダイニングに設置しているエアコンもほとんど使用することなく、寝室のエアコンは一度も出番がなかった程。家全体を足元からふんわりとやさしい暖かさで包み、健康な暮らしが叶う心地よい空間が出来上がりました。
1階で生活が完結できる間取り
快適動線と適材適所な収納
ワンフロアで暮らしが完結するように、間取りの見直しと動線の改善もS様邸のリフォームポイントでした。かつての独立したキッチンはオープンな対面キッチンへと一新し、並びには冷蔵庫まで飲み込める大容量のパントリーを新設。そしてふた間続きの和室はゆったりベッドを配置できる寝室(洋室)とウォークインクローゼットへ生まれ変わりました。
「ここで何か切っているでしょ、例えばトマト。そうすると『おばあちゃん、あっ、トマト!1枚頂戴』って孫が手を出してきて…(笑)」。遊びに来るお孫様とキッチン越しにそんな会話を楽しんだり、食材の出し入れから料理の配膳、片付けまで効率よく流れる新しいキッチンレイアウトに奥様は大満足。洗う→干す→畳むといった一連の洗濯作業を楽にしてくれるランドリースペースも出来て、シンプルになった動線に「家事がしやすくて、毎日が気持ちいいですね!」と声を弾ませています。
ミニマムに暮らすからこそ大切なのが、適量×適材適所の収納スペース。「それは私の部屋ねぇ」と冗談半分に言いながら案内してくれた玄関先には、シューズルームとは別にご主人専用のクローゼットをプラスしました。「ほらっ、ウェアに合わせないとおかしいでしょ(笑)」。棚の上にはゴルフキャップがショップのようにディスプレイされ、扉を開ける度に気持ちが弾んできそうです。「担当の方にはいろいろアイデアを出してもらって…。妻が『こんな風にしたい』って絵を描いていたけど、妻の希望と北洲さんの融合で好みに合った家になり、満足していますよ」。
審美眼にかなった物に囲まれた
美しい空間、優しい時間
塗り壁や天然木の風合いが優しいサーモウッドの板張り、出入り口の枠を彩るホワイトアッシュが織り成す内装は、しっとりとしたぬくもりを感じさせてくれます。「我が家では使わなくなったものを『2軍落ち』といって物置に入れ、その後処分するんですよ…」。余計な物は持たないすっきり整理された暮らしは潔くて、小気味よさを感じさせます。ソファに腰を掛け、ふたりでお茶を飲んでいる時が一番楽しい時間だというご夫妻。飾り棚の上で魅力を放つ南部鉄器の急須。くつろぎの時間を演出するカップ&ソーサー。ぷっくりとした表情が愛らしい花器は、お子様が住む九州を旅した時に出逢った“小代焼”。素朴な表情のネストテーブル、漆塗と飾り金具の美しい奥州岩谷堂箪笥…。ふたりの審美眼にかなった器や暮らしの道具達。好きな物に囲まれた空間はこの上なく心地よく、脱力することを許してくれる、そんな優しさが広がっています。