家を持つための新しい選択肢が、人生をもっと豊かにする
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2024年、株式会社北洲はブランドの再構築を行いました。
新たに掲げるミッション&スローガンは、【CULTURE via LIFE 次世代のスタンダードを切り拓き続け、生活をくらしに、くらしを文化へと引き上げる】。「生活」から、日々を愉しむ「くらし」へ変化させ、やがて社会全体の価値ある「文化」を創っていく。住まい文化の先導者として、その役割を北洲が担っていくことを表明しています。
住まいを手に入れるための経済的な選択肢を拡げ、住まい方の新しいサイクルを提供することも、CULTURE via LIFE につながっていくと北洲は考えます。その選択肢の一つが「残価設定型住宅ローン」です。
2024年9月17日に仙台国際センターで開催された新ブランドローンチイベントでの特別トークセッションに、人生100年時代を豊かに幸せに生きるための「住」の考え方を探ります。
人

大垣 尚司 さん
一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)代表理事
青山学院大学教授・金融技術研究所長、博士(法学)
1959年京都市生まれ、82年東京大学法学部卒業、85年米国コロンビア 大学法学修士。日本興業銀行、興銀第一フィナンシャルテクノロジー取締役、 アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学教授を経て現職。

三浦 祐成 さん
株式会社新建新聞社 代表取締役社長
「新建ハウジング」「ウチ/ソト」発行人。新建ハウジング編集長を経て現職。「観察者」の視点から、住宅産業の動向、生活者 の住まい・暮らしに対するニーズ・変化を読み解き、工務店の取るべき道筋を提示する。ポリシーは「変えよう!ニッポンの家づくり」。

村上 ひろみ
北洲株式会社 代表取締役社長
コト
残価設定型住宅ローン

普通の住宅ローンに、あらかじめJTIが設定する残価設定月以降に行使することができる、返済額軽減オプションと買取オプションという2つのオプション(借主が行使できる権利)を付加したもの。大手住宅会社6社に加え、2024年9月より株式会社北洲が地方の工務店として初めて取り扱いをスタート。
https://www.hokushuhousing.co.jp/concept/aftercare/zanka/
日本の住宅性能は、こんなに低くていいのか。
日本の街並みは、貧しくないだろうか。
三浦さん(以下 三浦) 住宅業界専門紙の記者の視点で、長年北洲さんをウォッチしてきました。私が見る北洲のイメージは「問いを立てる企業」。自然環境の厳しい東北で創業し、世界各国の住宅や街並みを見てきて、日本の家づくりに関して常に問いを立ててきたのでしょう。「この日本で、住宅の性能ってこんなに低くていいのか?日本の街並みってちょっと貧しくないだろうか? 暮らしそのものもなんだか貧しいんじゃないかな」と。

そしてその解決に、事業部の創設や技術の進化を通じて業界のどこよりも早く取り組んできた。業界の標準からすると10年~20年も早い印象です。早すぎるから、経営陣も社員さんも苦労しながら市場とのバランスを模索してきた。でもその苦労が企業の自力となり、今という厳しい時代を生き抜くベースになっているように見えます。
村上 住宅のハード面、特に性能と美しさについては30年以上前から他には決して負けないという気概で追求し続けてきた自負があります。けれどそれだけじゃなく、私たちにはもっとやれることがあると考えました。この少子高齢化社会において、家族の健康や幸せな生き方も提供していくことが重要だろうと。
それを示したのが、今回のリブランディングで導き出された「CULTURE via LIFE」というスローガンであり、地方の工務店として初めて認定された「残価設定型住宅ローン」です。
三浦 今、そして未来を見据えた問いへの解として今回のリブランディングがあり、残価設定型住宅ローンがあったわけですね。
大垣さん(以下 大垣) スローガンに住宅のことを何も言わず、「カルチャー」と「ライフ」だけを掲げる住宅会社って、日本中探してもどこにもないと思います。長寿命化で人生が長くなっている時代に、北洲さんは本当に大切なキーワードを、思い切ってCIとして掲げられたということです。
100年住宅は、4回循環させて100年住み継がれる家。
人は一生に3度住み替えることを、住宅業界は意識しているか。
大垣 人生100年時代といわれる中、住宅の性能も向上して、長寿命化が進んでいます。でも、よく考えてみると100年住宅だからといって、買った人が100年住むわけではない。親子代々住み継ぐというけれど、親は90歳ぐらいまで生きる可能性が高いわけです、相続するころには子どもも60歳を越えています。とっくに自分の家は持っていますよね。この間にギャップがある。だから、「家を相続させる」のではなく「家を世代から世代へと住み継いでいく」という住宅循環の発想が必要になるのです。

この発想に立てば、「100年住宅」は「100年住める家」ではなく、「家族と暮らす25年を4回見守ることのできる家」ということになります。長寿命の家を一世帯が住み続けるのではなく、4世代にわたり循環させていくという考え方です。具体的には、買取再販等への戦略的展開が必要となります。
このためには、家が100年保つだけでは不十分です。「家を25年しか買わない」ということができるソフトが必要です。そこで開発したのがJTIによる残価保証とこれを活用した残価設定型住宅ローンなのです。
三浦 今までは子が引き継いでいくしかなかった住宅を、今後は社会が引き継いでいくという感覚ですね。
大垣 そもそも、住宅を買う人の多くは子育て世帯です。買うときは「終の住処」と思っても、家族が一緒に住む幸せな時期は、せいぜい20年から25年です。子どもたちが独立してエンプティ・ネスト(空の巣)となった家で、孤独感や喪失感を感じ、場合によっては、心身に影響の出る方も少なくないと聞きます。
3LDKの家で子ども部屋を物置にして二人で暮らすより、活き活きと暮らせる別の場所に住み替えたほうがいいかもしれない。年をとったらケアサービスが受けられる家、ターミナル期にはより手厚いフォローが得られる場所と、住み替えていくほうが安心を確保できます。これからは、人は少なくとも一生で3回住み替える時代になるのではないでしょうか。
こうして、1軒の長寿命住宅が4回売れ、人は3回住み替えるとすれば、ビジネスドメインは12倍。将来人口が半減しても、住宅業界は十分生きていけるはずです。

村上 仙台で開催された講演会で、私が大垣さんからこのお話をお聞きしたのが2012年、震災の1年後でした。業界も地域も日本全体も震災復興で必死だった時期に、もっと未来に目を向けたお話をされていて衝撃を受けたんです。同時にその通りだと感銘し、講演後に追いかけてお声をかけさせていただいたのが、お付き合いの始まりでした。「わが社もぜひ仲間に入れてください」と。

残価設定型住宅ローンは「自分の家を持つ安心」と
将来的な「ライフチェンジの自由を得られる」仕組み
村上 残価設定型住宅ローンを取り扱うことができる事業体が大企業ばかりという中で、わが社のような中小企業が参画させていただいたのは異例だったと思うのですが。

大垣 大変失礼ながら、北洲さんの規模の企業さんが大手企業と同じ仕組みで協賛してくださることは想定していなかったので、むしろ新鮮でした。喩えていうならば大手企業は航空母艦のようなもので影響力も波及効果も大きいですが、旋回がきかない。住宅循環といった新しいビジネスモデルへの転換にあたっては、次世代を牽引する巡洋艦のような存在が不可欠です。それにぴったりなのが北洲さんということで、地方の工務店の第1号としてお願いすることにしたのです。
残価設定型住宅ローンは、借りた時点では、普通の住宅ローンと同じで、これに、私どもの残価保証を活用して、残価設定月に返済額軽減オプションと買取オプションを行使できる権利を付加します。残価保証とは、JTIが20年近いマイホーム借上げを通じて得たビッグデータを活用し、JTIが実際に実現可能な家賃をもとに算定された収益還元価値を保証するものです。最近のようにローンの期間が35年、あるいは40年、50年と長期化していきますと、現役引退後に返済を続けられるかは誰にとっても大きなリスクですが、返済額軽減オプションあれば安心です。また、家を売りたくなったときに値下がりしていても買取オプションがあればローンが残りません。このように、残価設定型住宅ローンは、将来における返済不安の払拭と、ライフチェンジにあたり家が束縛とならない自由を得られる、新しい仕組みなのです。
三浦 家のローンを何十年も払い続けるために転職の選択の幅が狭まってしまうとか、そもそも将来が不安で家を買うこと自体を躊躇するとか、そういった不都合・理不尽を解消するシステムということですね。
大垣 そうです。とはいえ、25年後、30年後に私どもがその家を買う約束ですから、売ったら終わりという企業とご一緒に仕事はできません。どんなに、頑丈に作られたとしても、家は生き物ですから、自分が施工した家についてしっかりとメンテナンスを継続してくださる企業であることが必要です。北洲さんはその点でも信頼できる企業だった。
村上 ありがとうございます。実は、お客様から厳しいご指摘や苦情をいただいた時期がありまして、これでは会社を継続できないという危機感からお客様満足推進部をつくり、維持管理に力を入れて参りました。社内の体制を万全にするだけでなく、お客様に維持管理を継続する大切さをご理解いただく活動にも取り組んでいます。
大垣 100年続く家を単に商品としてではなく、お客様との絆として仕込み、そこから「帯」のビジネス展開をする。そういうことを明確に意識する会社とそうでない会社では、この先10年で大きな差が出てくると思います。この過程では家は必ず世代循環するものだという前提で家を設計/施工し、それを実際に維持してゆく仕組みや力を備えざるをえなくなる。このことが、住宅事業者としての大きな力につながるのではないかと思います。
この3年、住宅の価格が大幅に上昇しています。為替相場、人件費、地政学的観点、さらには金利などから見て、建物の価格が大きく下がることは考えにくい状態です。これに、強化される一方の環境規制等も追い打ちをかけます。こうした中、家の差別化は「高い品質のものをお安く」から、「高い品質だからこそ買いやすく」に移らざるをえません。買い易さを英語でいうと「アフォーダビリティ」。これが、長寿命化・環境性能とならんで住宅政策の最重点項目となります。ただ、アフォーダビリティーは家というハードだけでは実現できません。お金や持ち方といったソフトのイノベーションが必要です。
たとえば、金利が上昇する中では、ローンの期間を伸ばさないと返済負担は下げられませんが、期間を伸ばせば、将来不安は大きくなります。このローンに二つのオプションを付けて残価設定型住宅ローンにすれば、返済負担を抑えつつ、将来不安の解消も解消できます。このように、残価設定型住宅ローンは、良い家をアフォーダブルに、つまり買いやすくための新たなソフトなのです。
私の祖父は京都西陣の呉服商でしたが、この祖父が「着物を安売りする店は一時は売上げが伸びても結局長続きしない。もともと着物は高くてよいものほど代々ひきつぐことができるから、結局は安い買い物になる。とはいえ、それをお客様に分かってもらうことは簡単ではない。高くて良いものをどうやって売るかを考えるのが西陣の商売人だ」といっていました。
三浦 性能が高い点をはじめ北洲の家は非常に価値がある。だからこそ買いやすくできるはず。そのソリューションの一つが残価設定型住宅ローンということなんですね。
大垣 そうです。残価設定型住宅ローンというのは、家の価値から得られる将来の安心の権利であり、住宅の機能の一つと考えてください。
お客様の暮らしと人生に寄り添う価値を提供し続ける会社として
北洲は『CULTURE via LIFE』を体現していく。
大垣 最近『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』(日本経済新聞出版)という本を出したところです。その最後の部分に「家と住宅ローンに縛られない」という節を設けて、顧客目線を欠く金融機関と住宅業者が生活者の人生を破壊すると指摘したところです。家を買って不幸になる人はいません。家を買って不幸になる人のほとんどはローンで不幸になるのです。

北洲さんの標語の一つに「自分ごと」というキーワードがあるとお聞きしました。家を買う時点で自分の40年後を想像できる人なんていません。ですから北洲さんにはぜひローンを組んで家を買われるお客様のことを「自分ごと」として考えていただきたい。そうすれば安易に40年ローンを勧められるはずがありません。自分の40年後を想定し、残価設定型住宅ローンの安心のオプションをつけてあげて、価値ある家をお客様に手渡しほしい、そう願っています。
村上 はい。建物の性能、品質はもちろん、お客様のくらしや人生に寄り添った価値を提供していくことを約束させていただきます。そして、私たち自身が CULTURE via LIFE を体現する会社になっていきたいと、心から思っています。
三浦 冒頭で、北洲は「問いを立てる企業」だと言いましたが、新しいスローガンの CULTURE via LIFE も、まさに問いですね。「ライフ」を「カルチャー」へ。それは、住まいと生活に関する常識を変えていくことでもあるでしょう。
家に縛られる人生や40年ものローンを個人が課される非常識が常識とされてきましたが、北洲は残価設定型住宅ローンというソリューションに出会い、今回提供できることになった。それはどの住宅会社でも提供できるものではなく、地力と情熱があり、さらにはメンテナンスをしっかり行っている北洲だからこそ提供できる点は、社員の皆さんが誇りに感じていいことだし、顧客にとっては新たな価値、自社にとっては武器にできるとも言えます。
これから北洲がこの価値・武器をうまく使いながら、住まいの常識、くらしの常識を変え、新しい住文化をこの東北の地から広げていくことを期待しています。